心理学系大学院へ行こう

“心理学系大学院へ行こう”では、主に大学院入試対策向けの参考書や受験のための知識を紹介しています。卒論対策にも一読ください。 さらに, 研究者になるにあたって役立ちそうな記事も掲載しています。psychology_ganbaru

サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ



サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ (中公新書)
下條 信輔

「人は自分で思っているほど、自分の心の動きをわかってはいない」
今回は日本の心理学者。
下條信輔は文字通り、日本を代表する心理学者です。
今はあんまり日本にいませんが。

この本は、上にも挙げたように、自分の知覚、認識、それに伴う意思についての話。
サブリミナルマインドと聞いて、有名なサブリミナル効果(映画館でコーラ飲みたくなる奴ね。)を連想される方が多いと思いますが、その話がメインではありません。
チープな日本語訳してしまうと潜在意識、となってしまい、誤解を生むために敢えてカタカナ英語をタイトルにしたのでしょう。副題が重要、かな。

これぞ心理学、という感じの名著ではないでしょうか。
一般の人が持つ、「人の心」への既成概念を見事に覆してくれるでしょう。
私たちは皆、自身の行動の裏には「自由意志」を感じて疑いません。
しかし、その自由意志が実は思っているほど、自由ではない。
私たちの行動は何に、どのように束縛されているのか。回避する術はあるのか。
これが心理学の答えるべき大きな命題の一つでしょう。

本書は大学での講義一年分をまとめた形になっています。
様々な研究が紹介されていきますが、ただそれらの紹介・羅列に留まることなく、揺るがないひとつのテーマのもとで、全てが有機的に繋がります。こんな面白いことはない。
心理学を全く知らない人も、心理学を少しかじった人も、どっぷり使った人も、しっかり楽しめる形となっています。もっとも、どっぷり漬かった人は、既に読んでいるでしょう。
マイナーな実験はそれほど出てこないので、ある程度心理学を学んでいる人には目新しい実験は少ないでしょうが、思考や説明の方法論としても実に参考になります。
主張が明快なのであることもあり、とても読みやすいです。軸が大事ですね。
新書でこのような内容が読めるのは幸せとしか言いようがありません。