心理学系大学院へ行こう

“心理学系大学院へ行こう”では、主に大学院入試対策向けの参考書や受験のための知識を紹介しています。卒論対策にも一読ください。 さらに, 研究者になるにあたって役立ちそうな記事も掲載しています。psychology_ganbaru

多重性の問題について2

さて,前の記事に書いた,2番目の多重性問題の弊害について詳しく解説します。

まず,「なぜ弊害が大きいか」というと,それはずばり,

「繰り返し数が(尋常じゃなく)多くなりがちだから」

です。検定の多重性は,検定を繰り返すほど,タイプ1エラー(あるいは第一種の過誤)をおかす確率が高くなります。

2番のような状況,すなわち「とりあえずたくさんの指標を測定し,それらの変数間で相関係数(相関行列)を計算したり,あるいは2対の比較(t検定)を繰り返すような」状況を具体的に考えてみましょう。

例1:
たとえば,ある基準で分けた2つのグループになんらかの差があることを考えて,それぞれのグループに質問紙を行います。質問項目は40個くらい。それぞれの質問項目について,2群で比較しちゃいましょう。お,いくつかの項目に有意差が出たぞって?そりゃそうです。

5%水準では,「まったくランダムな2群」を集めたとしても,20回に一回は差が検出されるのです。有意水準の補正をしない状態では,差がありそうだと目をつけたグループ間に,40個のうちいくつかの項目で有意差が出るのなんて当たり前ですね。

例2:
グループ間の差じゃなくて,項目そのものに興味がある場合もあるでしょう。よし,あるグループにおける,40個の質問項目の相関係数を求めて,関係性を調べましょう。お,いくつかの・・・(略)

40項目の2対の組み合わせは,40×39÷2=780ペアです。有意差ペアがたくさん出ないとむしろやばいですね。


このような検定の使い方は,仮説が明確にある場合にはそもそも生じにくいですが,仮説の有無にかかわらず,有意確率補正なしにはやってはいけません。有意確率補正があればやっていいです。あと,相関係数だけダラっと出して,検定かけないのであれば,どう考察するかは置いておいて,問題はありません。

”とりあえずたくさん指標を取ってみよう”系の研究にありがちなので気をつけましょう。