心理学系大学院へ行こう

“心理学系大学院へ行こう”では、主に大学院入試対策向けの参考書や受験のための知識を紹介しています。卒論対策にも一読ください。 さらに, 研究者になるにあたって役立ちそうな記事も掲載しています。psychology_ganbaru

因子分析と主成分分析

SPSSで因子分析しようとすると,手法の中に主成分分析というものがあります。これ実は,因子分析ではないのです。気をつけて、ということで。

因子分析とは,
 「予め因子数を決め、その因子内の内部整合性を高めていくための手法」です。

主成分分析とは,
 「複数の変数間の相関をなるべく少数の合成変数(つまり因子)で説明する手法」です。

両者とも,複数の質問項目(つまり質問紙)の結果に対して,用いることができます。ただし,(主に探索的)因子分析は,同じ質問紙に対し何度も繰り返し用います。つまり,項目を削ったり,足したりして内部整合性を高めていく作業を伴います。これに対し,主成分分析は,基本的に一回やれば充分です。

因子分析は,因子数を決めて,作業に取り掛かるという点では,ある程度の「仮定」あるいは「仮説」が存在します。ある質問紙が,ある特定の因子によって構成されている根拠は,アプリオリ(事前)には決定されていないためです。裏を返せば,因子分析は,仮定や仮説に従えば,どの因子数を用いても良いのです。決めた因子数の範囲内で,質問項目の内部整合性を高めていくことが可能です。

一方で,主成分分析は,出力された結果が全てです。主成分分析結果は,「どの因子数が一番当てはまりがいいか」を示しているだけです。なので,「何因子によって構成される」という仮説がなくても実施可能です。

このように,(探索的)因子分析と主成分分析は,「何因子によって構成される」という仮説の有無が大きな違いとなります。他にも相違点はありますが。

二つの違いを分かりやすく説明してくれているものに狩野(2002)があります。
http://www.sigmath.es.osaka-u.ac.jp/~kano/research/seminar/30BSJ/behavior02.html

因子分析は因子分析で,確認的因子分析,探索的因子分析と大きく二つに分かれ,用途が異なります。しかし,ここではトピックの範囲を越えるので触れません。

心理学の分野では基本的に理論が先にあるはずなので,なかなか主成分分析をする機会はないと思います。ちなみに,「主因子法」は因子分析のメジャーな手法です。名前が似てて,混同しがちですので注意しましょう!

※このトピックは,質問紙を対象にした解析を前提にしています。他のシチュエーションには当てはまらないこともあるのでご了承くださいね。

改訂:2017年06月03日