心理学系大学院へ行こう

“心理学系大学院へ行こう”では、主に大学院入試対策向けの参考書や受験のための知識を紹介しています。卒論対策にも一読ください。 さらに, 研究者になるにあたって役立ちそうな記事も掲載しています。psychology_ganbaru

認知神経心理学

認知神経心理学 (文庫クセジュ)
グザヴィエ・スロン(著) 須賀哲夫・久野雅樹訳 (白水社

題名の通り、認知神経心理学の本。
認知神経心理学とは、その名の通り、認知心理学神経心理学です。
この本の内容は、主に、神経心理学が(認知)心理学にどのように貢献してきたか、
また、神経心理学にとって認知的アプローチが如何に重要か、ということの紹介。
認知心理学神経心理学に興味がある人は読んでおいた方がよいです。
方法論、つまり研究へのアプローチ、研究結果の臨床への還元方法など、
ダイナミックなサイクルが具体例を挙げてうまく、解説されています。

そしてこの本の良いところは、何よりも著者のスタンス。
自分の見解を示すだけでなく、その限界や他からの批判などをしっかり記しています。
しっかりと、視野が広いです。章立ても魅力的。これだけで優れた本だと分かる。
 �@心理学と神経心理学、�A単一ケースによる神経心理学、�B三つの具体例、
 �C認知的流派から臨床実戦への影響、�D理論的妥当性
本筋ではないものの、モデルを立てるとは何か、それがどのように実際に還元されるか、
など、研究の根本にあるべき考え方が丁寧に示されています。
タスクアナリシス(本文にこの言葉は出てきませんが)も具体例を挙げて為されており、
自分でモデル作りをする際のヒントにもなるでしょう。(特に失算についてのものが良い)

良書、良書。科学とは斯く在れというお手本・基本です。
本文中の傍点部分のみすべて抜粋して示したいくらいです。重要なことが盛りだくさんです。
そして、新書だから持ち歩けます。

※2017年10月 追記

ついでに宣伝ですが,私の著書「心理学入門」の第10章に神経心理学についての概論があります。他の本よりも,さくっと簡潔にまとまっているので,心理学出身者で神経心理学に興味のある方にはお勧めです。また,同様に第5章「認知心理学」では,認知神経心理学的な考え方も紹介しています。