心理学系大学院へ行こう

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事実と仮定

科学って、客観的事実のみを伝える学問だよ!それが科学ってもんだ!

なんて思っている人がいたら、そいつは「事実」というものについて、
少しばかり勘違いしているようです。
科学は、客観的事実を伝えます。これは間違いない。
しかし、何故か?
客観的事実は、仮説を確証したり反証したりする材料になるからです。
材料というのは、つまり根拠というやつです。

しかしその仮説は何処から出てきたのでしょうかね?

まず、仮説というものの役目を考えましょう。
ある主張がある。その主張を保証する客観的事実が欲しい。
そこで登場するのが「仮説」です。
仮説は、ある主張を客観的事実と対応付けるための橋渡し役です。
つまり、その性質から、ある程度具体的であることが求められます。
一方、ある主張のことを、「仮定」と呼びます。これは「理論」といってもいい。
仮定は仮説と違い、抽象的、一般的であったほうが良い。
何故なら、より多くの事柄を説明できる方が嬉しいからです。

ちょっと寄り道して、新たな用語を導入してみます。
実際に観察可能・経験可能なものを指す言葉を「観察語」といいます。
逆に、それが不可能なものを「理論語」といいます。
観察語は、具体的な現実と対応づけることができますが、理論語はそうはいきません。
例えば、観察語は、りんご、回数、食べる、などです。
論語は、書字中枢、うまい、頑張る、などです。
厳密には程度の問題なのですが、理論語は「客観的」ではありません。

これらの語を使って仮定と仮説を表現すると、
・仮定は、理論語を用いて表現される。
・仮説は、観察語を用いて表現される。
となります。実は、これも程度問題なのですが。

例を出してみましょう。、
・仮定:社交性のある人はモテる。
・仮説:友達の人数が多い人の方が、より異性に告白される回数が多い。
といったところでしょうか。

「社交性」「モテる」というのは理論語です。
このままでは、実験としてこの仮定を検証することができません。
それらのtermが何を指すのかが一意に決まらないからです。
そこで、仮定から仮説を「演繹」します。
演繹とは、ある命題から論理的に誤りのない別の命題を引き出すことです。
たぶん。
「社交性」と「モテる」という用語を言い換えたと言っても良いでしょう。
ここで注意しなければいけないのが、この言い換えも、仮定の一部だということです。
社交性を、友達の人数で測ることが出来るものだと仮定したのです。


・・・そんなこんなで、仮定から仮説を引っ張り出しました。
仮定が、理論であり、主張です。
仮説が、仮定を検証する手段です。
そして、実験結果が客観的事実であり、仮説および仮定の正しさを判断する根拠となります。

科学は客観的事実のみを伝えるものでしょうか。
具体的な現実の出来事に対する説明を与える仮定(理論)を提案するのが科学です。
その提案が投げっぱなしではいけないので、実験をして根拠を一緒に示しているのです。

科学者は、現実に起こっている現象を、よりシンプルな仮定を用いて説明しようとします。
ニュートン運動方程式も、アインシュタイン相対性理論も、仮定です。
ただ、限りなく事実に近いといえる仮定です。
それは、長い年月をかけて反証されずに生き残ってきた強い仮定だからです。
また、少ない仮定で膨大な現象を説明することが出来る、良い仮定です。

確実な事実というのは、思ったよりも少ないものなのです。