心理学系大学院へ行こう

“心理学系大学院へ行こう”では、主に大学院入試対策向けの参考書や受験のための知識を紹介しています。卒論対策にも一読ください。 さらに, 研究者になるにあたって役立ちそうな記事も掲載しています。psychology_ganbaru

超簡単・心理統計の基礎3 t検定

3.二群の平均値の比較(t検定)

2群の平均値の比較にはt検定を用います。t検定は,t分布やt値ってものを使うので,t検定と呼ばれますが,そんなものを知らなくてもt検定は行えます。なので,とりあえずt検定の使い方のみを説明します。

t検定は,統計的仮説検定の一種です。対象のデータにおいて,「2つの群の平均値に差が無いと仮定すると(帰無仮説),なんかおかしいんじゃない?」という感じになったら,その帰無仮説を棄却して,「差が無いとはいいづらいねー」と結論します(対立仮説の採択)。背理法ってやつだ!

たとえば,「指導法(新・旧)の違いによって英語の平均点が異なるか」を調べたい時などに使えます。「A組とB組の身長に差があるか」みたいなことを知りたいときにも使います。

さて,まずは,統計ソフトを使うときに知らなければいけない2つのオプションを押さえましょう。

・対応の有無
「2群のデータが対応している」というのは,「2群のデータが関係している」ことです。この場合の関係とは,数学的には相関関係があることを意味します。

たとえば,A組とB組の点数を比較するときには,関係ない人たちなので対応はないと考えてOKです。一方で,A組とB組が全員双子の片割れずつを集めたクラスだとしたら対応があるといえます。でも,これは極端なケースです。私たちが扱う範囲で,「対応がある」場合とは,同じ参加者群から2つのデータが得られた場合(もちろん,それらをt検定で比較する)を指します。

対応の有無は,検定力というものに関係があります。検定力とは,有意な差を見出す力です。簡単に考えると,対応のデータを比較する場合には,2つの群に共通する(相関する)個人差の要素を差し引いた計算をするので,その分,比較に関する推測の精度があがるのです。

「推定ってなんのことだ?」って思った人は,仮説的統計検定は,サンプルから母集団の性質を推測する方法であったことを思い出してください。

・片側と両側
もうひとつ指定しなければいけないオプションは,片側検定と両側検定というものです。2群の差を比較したい場合には,少なくとも心理学では,何らかの仮説があるはずですね。つまり,「新しい指導法は古い指導法よりも効果的である」みたいな。

「どっちのほうが大きい」という仮説がある場合には片側検定,「どっちとか別に興味ないけど差があるんじゃないか」という場合には両側検定を使います。

何が違うかというと,片側検定では,予測と逆の結果が出たら,その時点で有意差とかそんなの関係なく,アウト!なわけです。両側検定は,そういうことを気にしないで用いることができます。

じゃあ両側のほうがいいの?というと,そんなこともないわけです。つまり,さっきもチラッと出てきた検定力差があるのです。片側検定のほうが,リスク背負っている分,検定力は高くなります。すなわち,両側検定と比較すると,ちょっとだけ,有意な差があると判断されやすくなるのです。

 【NEXT 超簡単・心理統計の基礎】 psychology-ganbaru.hatenablog.com

 



初稿:2009年02月18日
改訂:2017年06月03日