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超簡単・心理統計の基礎4 分散分析

4.三群以上の平均値の比較(分散分析)
 ※2017年6月,全面的に改訂しましたよ。
 ※2017年12月,図をひとつ追加。

三群以上の平均値の比較の検定には分散分析を用います。たとえば、「指導法(A, B, C)の違いが,英語の成績に影響を与えるのか?」をということを検討したい場合,あるいは,「指導法(A, B)の違いが,教科(英語と国語)に与える効果がどうなってんのか?」を検討したいような場合です。

前者を,1要因3水準の分散分析、後者を,2要因(2水準×2水準)の分散分析といったり書いたりします。なんじゃこりゃ。

用語の説明に入る前にまず,誤解されがちな重要なことをひとつ,述べておきます。分散分析は,「ある要因の効果があるかないか」を検定する手法であり,群間(水準間)のを検定をおこなうものではありません。とりあえず覚えていてください。


図.要因の効果(「心理学統計入門」より転載)

・要因と水準
さて,まずは用語を覚えましょう。要因とは,「従属変数に与える影響(独立変数)の種類」のことです。前者の例の場合,独立変数は「指導法」のみです。だから,要因の数は1つです。後者の例の場合は,独立変数は「指導法」と「教科」なので,要因の数は2になります。

次に,水準とは,「ある要因(独立変数)が分ける群」のことです。前者の例の場合は,3種類の指導法(A,B,C)があったので,水準は3です。後者の場合は,指導法(A,B)は2つ,科目は英語と国語の2つでした。

このように分散分析では,要因と水準の数を好き勝手に設定することができます。

・被験者間と被験者内(データの対応)
分散分析においても,t検定と同じように,対応の有無が問題になります。データの対応がない要因を,被験者間要因,データの対応がある要因には,被験者内要因といいます。データの対応は,それぞれの要因ごとに異なる可能性があります。つまり,2要因以上の分散分析においては,被験者内要因と被験者間要因両方使うこともできるんです。

被験者間要因は,ある要因で分けられた水準すべてが,異なる被験者から得られたデータである必要があります。たとえば,前者の例では,指導法の違いによって,水準が3つに分かれています。異なる被験者群に対して,異なる指導をした場合には,被験者間1要因3水準の分散分析を適用することになります。

一方で,後者の例では,指導法が被験者間だとしても,教科(英語と国語)は被験者内要因にすることが可能です。このように,ひとつの実験計画に被験者内要因と被験者間要因が含まれている場合には,混合計画と言います。なので,この場合には,2要因混合計画(2x2)の分散分析と呼ぶことができるのです。

・主効果と交互作用
さて,本題です。分散分析にはt検定にない新たな概念が出てきます。それが効果という概念です。どういう効果なのかというと,「各水準の平均値をばらつかせる効果」です。ある要因によって分けられた水準の平均値がばらついていたら,いまいちよくわかんないけど,なんかしらその要因が,従属変数の平均値に影響を与えていそうですよね。効果っていうのは,そんな程度の概念です。

ちなみに,t検定も,1要因2水準と捉えることができます。2水準の場合は,「要因の効果=差」ってことになります。つまり,2水準がばらつくと,「2つの水準の平均値に差がある」という解釈が必ず成り立ちます。

ややこしいのが,3水準以上の場合です。平均値がばらついたとしても,必ずそれが「各水準すべての差」に繋がるとは限りません。たとえば「A>B>C」とならなくても,「A=B>C」であっても,「要因が水準の平均値をばらつかせた」ということには変わりがないのです。

・主効果と交互作用
効果には,主効果と交互作用という,ふたつの種類があります。主効果とは要因単独の効果です。交互作用とは要因が2つ以上絡み合ったよくわからん効果です。

とりあえず2×2の2要因分散分析の例で考えてみましょう。指導法の主効果というのは,指導法Aを導入した群の成績の方が指導法Bを導入した群よりも,英語と国語の両方において高く(あるいは低く)なることを意味します。要因の主効果は,他の要因と独立なので,他の要因に邪魔されない(影響を受けない)のです。

同様に,教科の主効果があったとしたら,それは,指導法AとかBとかに関係なく,英語の方が国語の点数よりも高い(低い)ことを意味します。

さて,次に交互作用です。交互作用は,2つの要因の影響が交じり合った,よくわかんない効果です。交互作用がある状態とは,英語の成績に関しては,指導法Aのほうが指導法Bよりも効果があったのだけれど,国語の方では変わらなかった。いやいや,逆に指導法Aは悪影響を与えてしまった,なんて場合です。

さて,ここからが,実用的に重要な事項です。つまり,分散分析の結果,主効果も交互作用も有意になったときは,何をどう解釈すればいいのでしょうか?

そんな時には,いったんは,主効果が有意であるという結果を保留します。これは,交互作用があるために,間違って,主効果が有意であるという結果が出てしまった可能性があるためです。じゃあ,本当に主効果があるかどうかを検討できればいいですね。

そんなときに使うのが,単純主効果の分析というものです。ここでは,とても簡単に表現すると,単純主効果とは特定の水準における主効果の分析です。別の言い方をすると,次元を一個下げた分散分析(t検定にもなりうる)です。

今回の場合は,たとえば国語のみのデータを用いて指導法の効果(AとB)を比較したり,英語のみのデータを用いて指導法の効果(AとB)を比較したりすることです。両方の水準において,指導法の効果が見られれば,やっぱり指導法の効果ってあったんじゃない?って結論できます。

・多重比較
3水準以上の要因の主効果が場合となった場合には,多重比較という検定を行うことが普通です。やんなくてもいいし,分散分析をおこなわなくても,多重比較はおこなってもいいんですが,とりあえず,分散分析の流れでは,慣例手的に,そんな場合におこないます。

分散分析後に慣例的におこなう多重比較とは,簡単に言うとちょっと工夫して,t検定を繰り返すことです。広義の意味で,まじめに多重比較を定義すると,ある一定の危険率を保ちながら検定を繰り返すことです。

たとえば1要因3水準の例では,要因の主効果が有意になったとしても,A,B,C群それぞれの間に有意差があるとはいえません。でも,人間だもの,具体的にどことどこに差があったのか知りたいですよね。これを多重比較で調べます。

3水準の場合には,「AとB」,「AとC」,「BとC」の3回比較すればいいですね。3回検定を繰り返すってことは,危険率ってやつがそれだけ増えてしまうってことです。大変なので,どうにかして,3回やっても,全体として危険率は5%に保つようにしなきゃいけないのです。それが,多重比較という方法です。

多重比較には,様々な方法が提案されています。が,長くなるのでここでは解説しません!

初稿:2009年02月18日
改訂:2017年06月02日

 

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